惑溺
『好き』という言葉に、喉の付け根辺りがぎゅっと締め付けられた。
息苦しさを無視して、無理やりコーヒーを飲みこむ。
すとんと熱いコーヒーが喉を通り過ぎると、今度は心臓のあたりがじわりと苦しくなった。
「好きだなんて、そんなの今更……」
そう言いかけた瞬間、私のバッグの中で鳴り出した携帯電話。
慌てて携帯を取り出すと、知らない番号からの着信だった。
10時過ぎの着信。
もしかして……
なんて、馬鹿な期待をしている自分に気が付いた。
今更なんて言いながら、期待してる。
彼からの電話を。
自分でも驚くくらいに。
「由佳、電話でていいよ?」
携帯を持ったまま固まっていた私に、博美は不思議そうに首を傾げた。