惑溺
 

リョウのバカ。リョウのバカ。リョウのバカ。

そう言いながらどんなに枕を殴っても、ポスポスと気の抜けた手ごたえしかなくて、繰り返すほど情けなくなってきた。



些細な事でくだらないケンカをする私達。


リョウの分かりにくい性格も、冷たい言動も、大キライなのに。
こうやってリョウの事を思い浮かべるだけで、胸がきゅんと苦しくなる自分が、一番バカだと思う。

今まで殴っていた枕を、ぎゅっと抱きしめてベッドの上で転がった。


「リョウのバカ……」


会いたいなぁ。
会って、ぎゅって抱きしめて欲しい。

なんて、本人に直接言えるほど素直でも可愛くもない私は、会いたい気持ちを誤魔化すために、きつく枕を抱きしめて大きなため息を吐き出した。
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