惑溺
 
それどころか、メールも電話も。
一切連絡を取らないまま迎えた金曜の夜。

こんなケンカしたまま社員旅行に行くのは、すっきりしなくてイヤだけど、私は悪くないんだからしょうがない。


リョウが悪いんだ。
向こうから謝ってくるまで私は絶対許さないんだ。



……はぁ。


ついても、ついても、尽きることのないため息。

ため息をつくたび幸せが逃げるのなら、私の幸せの持ち分は限りなくゼロに近いと思う。



「……リョウのバカ」


ベッドの上の枕をグーでパンチしながら、誰もいないアパートでひとり小さく呟いた。
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