惑溺
「お、起きてたの……!?」
驚く私を見下ろしながら、軽く首を傾けて目を細めた。
「今起きた」
ゆっくりと近づいてくる憎たらしい唇に、目を奪われて瞬きさえできない。
呼吸する度に目の前で動く逞しい胸板。
カーテンの隙間から差し込む月明かりが、首筋から鎖骨を綺麗に浮かび上がらせる。
私の顔に柔らかくかかる、リョウの黒い前髪。
ただそれだけで、私の体は緊張して勝手に鼓動は早くなる。
ベッドの上で自由を奪う様に覆いかぶさりながら、長い指でゆっくりと私の髪を梳く。
もう少し動けば唇が触れそうなほどの距離で、私の事を見下ろす黒い瞳。
緊張で乱れた私の呼吸に気付いたのか、リョウは余裕の表情でひとり動揺する私を見て笑った。