惑溺
 
「……離して」

そのリョウの余裕の態度が悔しくて、彼を睨みながらそう言った。

本心とは裏腹に反抗的な態度をとる私を見下ろして、リョウが喉を鳴らすようにして小さく笑った。
そして私を押さえつける腕に、ゆっくりと力を入れる。


乱暴にベッドの上に押さえつけられた手首が痛い。

私の呼吸はますます荒く乱れる。
吸っても吸っても息苦しい、溺れていくような感覚に、眩暈がした。


本当はこのままきつく抱きしめて、キスをしてほしいのに。
捻くれた私はとても素直にそう言えなくて。

「痛い、離して……」

涙目で彼を睨みながらそう言うと、私を見下ろす黒い瞳が面白がるように細くなった。
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