惑溺
 

それなのに

「……由佳」

リョウは耳元に唇を寄せて、低く甘く私の名前を呼ぶ。

ずるい。
そんな声で名前を呼ばれたら、全部どうでもよくなるじゃない。
いつだって私の名前を呼ぶあなたの声は、どんな言葉よりも甘く優しく、私の心を一瞬で奪っていく。

ふ、と私の体から力が抜けたのを感じ取ってリョウが目を細めた。

「……由佳」

耳元で囁きながら

私の額に、目蓋に、耳朶に、首筋に。
狂おしいくらい優しく唇を這わす。

その優しさが歯痒くて、肌に唇が触れるたびにびくりと体が震えた。


「リョウなんて、……ダイキライ」

焦らすように微笑むリョウを睨んで、私は自分から目の前の唇に噛みつくようにキスをした。
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