惑溺
 
薄暗い部屋に響く自分の乱れた呼吸は、まるで喘いでいるみたいに聞こえた。

「……離して。
キライ、リョウなんて」

喉から絞り出した自分の声。
その情けないくらい甘えた声色に、恥ずかしくて体が熱くなった。


「ダイキライ……」


私の掠れて鼻にかかったような声に、クスリとリョウが笑う。

彼の唇が少し開いて白い歯がのぞいた。
唇の間から漏れる熱い吐息が頬をくすぐる。
押さえ付けられた手首がどくん、どくんと激しく脈打つ。


ダイキライ、リョウなんて。

自分勝手で
傲慢で
乱暴で
冷たくて


ケンカの後に1週間も放っておいて、謝りもせずにベッドに引きずり込むなんて。

なんて身勝手な男。
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