惑溺
 
つられてリョウの視線の先を見ると、そこには魅惑的な甘い香りを漂わせる、カクテルの小さな水溜り。

リョウの指先の動きに反応して私が体を反らせるたびに、カウンターの上にこぼれた琥珀色の液体が、ゆらゆらと光を反射して揺れていた。



「オーガズム」


カウンターの上の、そのとろりとした琥珀色の液体を見てリョウが耳元でそう言った。

「え、オーガ……?」

はぁはぁ、と肩で息をしながらその言葉の意味が分からずに繰り返すと、リョウは指を止めて微笑み

「オーガズム。カクテルの名前」

低く甘い声で、ゆっくりと囁いた。

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