惑溺
 

「私もう帰るよ。だってもう2時過ぎてるもん」

「えー!?
あたし、まだまだ飲み足りなーい!!!
次の店行くぞー!」

酔っ払いの沙織は、夜空に向かって大声で叫ぶ。

ああ、完全酔っぱらって、楽しくなっちゃってるよこの人。
どうしよう、もう勘弁してよ。

お酒の飲めない私は、1次会から3次会までずっと周りに気を遣ってて、疲れきってるのに。


途方に暮れる私と、私を羽交い絞めにして叫ぶ沙織。
道を行くサラリーマンが、その様子を見てクスクス笑った。


……はぁ。


思わず大きなため息をつきながら、私の肩に纏わりつく沙織をどうしようか考えていると、

「なになにー?松田さんと戸田さんまだ帰んないんすか?
どっか他の店行っちゃう感じ?」

後ろから陽気な声が聞こえてきた。
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