惑溺
 
「ごめんなさい!」

なんでよりによってプリンを買ってきちゃったんだろう。
自分が好きなものなら喜んで貰えるだろうなんて思って、相手の嗜好なんて考えずに買ってきた4つのプリン。

甘い物が苦手な男の人なんて珍しくもないのに。
そんな事も気付かない自分にため息が出た。

肩を落とした私に向かって、彼は優しく微笑んで言う。

「いや、謝らなくていい。このプリン好きなんだろ?
自分の好きなものを人に薦めたくなる気持ちは分かるよ」

苦手な甘いものを無理して食べてくれたり、こうやって落ち込む私をフォローしてくれたり。
この人、嫌な人だと思ったけど、口が悪いだけで本当はいい人なのかもしれない。


「……でも普通、一人暮らしの男に甘い物は買ってこないよな」

う。

「こんな日持ちのしない甘ったるいプリンなんて」

うう。

「しかも4つも」

………ううう。
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