惑溺
 
「松田さん、大丈夫っすか?本当に酔ってない?」

よっぽど赤い顔をしていたのか、矢野くんが心配そうに顔を覗き込み私の髪をかきあげて頬に触れた。

「あ、大丈夫!ちょっとドキドキして……」

触れられた手から逃げるように体を引いて、熱い頬を誤魔化すようにパタパタと手であおいだ。


何を考えてるんだ、私。
仕事中のリョウを見て、一人でこんな事考えてドキドキするなんて、バカみたいだ。


「ドキドキ?」

「ごめん、なんでもないの」

心配してくれる矢野くんにこの動揺を悟られたくなくて、顔をそらして目を伏せた。


「ね、松田さん。それ、クセですか?」

その様子を見て、矢野くんがクスクス笑って言った。

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