惑溺
 
こくり、と二口目を飲んで、落ち着いた照明の店内の中リョウの姿を探すと、奥にいた二人の男のお客さんにコートを取り出し、出口まで見送りに出ている所だった。


カラン。
手の中のグラスの中でライムと氷がぶつかって、小さく音が鳴る。

そのたびに弾ける小さな炭酸の気泡とライムの香りが、なんだか楽しくなってきてグラスを傾けた。


「勢いよく飲みますね。
松田さん本当はお酒好きなんでしょ」

「嫌いじゃないよ。
ただ、弱いから普段は飲まないだけで」

「普段は飲まないのに飲むってことは、今日は特別ってことっすか?」


嬉しそうに聞いてくる矢野くんに、わざと眉間にしわを寄せて不機嫌な顔をして見せた。


「私がウーロン茶でいいって言ったのに、勝手にお酒頼んだのは矢野くんでしょう?」

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