惑溺
 
「もういいよ。乾杯のあいさつなんていらないから、飲もうよ」

考え込んだ矢野くんを無視して、沙織はさっさとグラスに口を付ける。


「ああー!せっかく女心をグッとつかむ、気の利いたセリフを考えてたのに……!!」

「うるさい。
そういうのは好きな女と二人っきりのデートの時に取っておきなさい」


そんな二人の賑やかなやり取りに笑いながらグラスに口を付けると、辛口のジンジャエールとライムの香り。
ごくりと飲み干した後に、強めのアルコールが喉を熱くした。



いつも甘いカクテルに慣れているから、少し辛口のカクテルですぐに酔ってしまいそうな気分になる。


朝から仕事をして、さらに忘年会で疲れ切った頭に、アルコールがゆっくりと染みて緊張がほぐれていく感じ。
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