惑溺
「ね、松田さん。それってクセっすか?」
「え?」
突然覗き込んできた矢野くんの顔の近さに、驚いて体を引いた。
「何?クセって、私なにか変な事してた?」
一定の距離を保とうとする私に、警戒するのもバカバカしくなるような無邪気な笑顔でニコニコと頷く。
「松田さんってさぁ、こうやって目を伏せるでしょ」
さっきまで私がやっていたように、頬杖をついて目を伏せて指先でカウンターをなぞる。
「この仕草、すごい色っぽいんだけど。
クセっすか?」
何気ない無意識の仕草をそうやって観察されて真似られたのが恥ずかしくて、思わずうつむいた。
「ほら、そうやって恥ずかしそうに目を伏せるの。
睫の影が頬に映って、すっごい色っぽい」