惑溺
ゴミ袋を持ったまま抗議するように彼を睨む私に、リョウは面倒くさそうに舌打ちをした。
そして突っ立ったままの私の所へ歩いてくると、後ろの壁に片手をついて上から私を見下ろした。
「うるさい女だな。
好きじゃないから、別れたんだよ」
低く艶のある声で耳元でそう言った。
背中に壁と目の前にはリョウの逞しい胸。
その狭い空間で、体が、顔が近すぎてドキドキする。
こんな距離でリョウの鋭い瞳に見つめられると、緊張で身動きがとれなくなる。
「……悪いけど、俺だって、女と別れたばっかりで少しイライラしてるんだ」
長いまつげを伏せて、私の耳元で低く囁く。
まるで獰猛な獣に狙いを定められた小さな動物のように、私は瞬きすら出来ずに息を飲んだ。