惑溺
キス、される……!?
思わずぎゅっと目を閉じて体を固くした。
腰に回された腕の感触、髪をかきあげた指先の感触。
だけど、それ以上彼が私に触れる気配はなくて、恐る恐る目を開けると
意地悪な顔で私を見下ろすリョウの顔があった。
「もうちょっと抵抗しろよ」
ふ、と短く息を吐いて笑いながら私の体を解放する。
な、なんだ。からかわれたんだ……。
びっくりした。本気でキスされるかと思った。
思わず力が抜けてその場に座り込んだ私を見て、リョウは色っぽい唇を歪めて笑った。
「それとも、本気で口を塞がれたかった?」
「…………ッ!!」
人の心を見透かすような艶っぽいリョウの瞳にカッと、頬が熱くなる。
「帰るっ!!」
私は持っていたゴミ袋をリョウの顔めがけて投げつけ、玄関へ向かった。