惑溺
 
人の事をバカにして、振り回して。
無理やりキスするふりをして、動揺する女をみて面白がるなんて、悪趣味にもほどがある!

まんまと彼の策略に乗り、情けない程動揺してしまう自分が恥ずかしくて悔しくて。
頬が燃えるくらいに熱かった。

早足でたどり着いた玄関で靴を履こうした時、後ろから声をかけられた。


「……悪かったよ」

その声に振り向くと、怒る私を面白がるような余裕の笑み。
この人、ぜんっぜん悪いと思ってない……!

「帰る!」

もう顔も見たくもない。
一秒でも早くここから出たかった。少しでも早くその視線から逃げ出したかった。
私はショートブーツに足を引っかけたまま、その形が崩れるのも無視して玄関のドアに手を伸ばす。

すると、リョウ腕が後ろから伸びてきて、私の目の前にあるドアの取っ手を掴んだ。

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