惑溺
「お礼は何がいい?」
「お、お礼……?」
喉から絞り出した掠れた声が自分の声じゃないみたいだ。
お礼なんていらないから、私から離れて。
その瞳で私を見ないで。
その声で私に囁かないで。
自分の中で震える理性がそう叫ぶ。
でも、そんな願い、とてもじゃないけど彼に向かって言えるわけがない。
それじゃあ、私はあなたを意識してますって告白しているようなものだ。
「――お礼はキスでいい?」
耳元でリョウの低い声が、甘く響いた。