惑溺
唇が離れた瞬間、
────パンッ!
と乾いた音が部屋に響いた。
気がつくと私はリョウの頬をぶっていた。
「な、なにするの……!」
肩で息をしながらリョウを睨む。
「何って、キスくらいでいちいち騒ぐ年でもないだろ」
リョウはぶたれた頬を触りもせずに、私の反応を面白がるような笑みをうかべた。
「――――ッ!!」
こいつ、本当に最悪……!
私は自分のバッグを掴むとそのまま一言も話さずに、逃げるようにリョウの家を飛び出した。