惑溺
外に出るともう辺りは暗く、肌寒かった。
太陽はもう沈んだ後で紺色に染まった空に、西の方だけが名残のようにうっすらと赤く滲んでいた。
ああ。もうこんな時間なんだ。
あんな奴の為にせっかくの日曜をつぶしたなんて、本当に腹がたつ……!
地下鉄の駅までの薄暗い道を一人で足早に歩いていると、風の冷たさに体が震えた。
秋風に吹かれて飛ばされた街路樹の葉が、乾いた音をたてながら私を追い越して行く。
寒さにきゅっと身を縮めると、無意識に体がリョウの腕の中の暖かさを思い出した。
聡史とはまったく違う、逞しくて乱暴な腕。
たかがキスをされただけでこんなに動揺している自分がバカみたい……。
思わずリョウのマンションの方向を振り返った時、バッグの中の携帯が鳴り出した。