近いようで、遠い存在のキミ (完)
 

「…狭いね」


「あ、ごめんなさい…ここしか思い付かなくて。とりあえず少しの間だけ…」


狭い場所に無理矢理詰め込まれて、怒っちゃったかな…。


不安になって、ハルカの顔を見上げた。


「!」


私はすぐに下を向く。


ひぇぇ…。


ち、近すぎて迫力が…。


この距離はすごく恥ずかしい!


屈んでいる分、さらにお互いの顔の距離が近くなっている。


怖いもの見たさで、チラッと目線をハルカに向ける。


……ん?


…ていうか、笑いを堪えてる…?


ハルカは口に手を当てて、ククッと肩を震わせている。


「…ウソウソ。助かる。あんた、おもしろいね。オレのこと知ってるんだよな?」


「え、まぁ…ハルカ好きだし………っと」


つい、本音が。


ハルカがフッと笑った。


「にしては落ち着いてる」


「―――…」


いや、心臓バクバクですけど。


「もーっどこ行っちゃったんだろう!?」


バタバタという足音と共に、声がすぐ近くを通る。


「!」


私の体がビクッと反応する。


ヤバ!


こっちに来ませんように!


声を出さないように、自分の口に手を覆った時だった。


「…こういうスリル、たまにはいいかもね」


ハルカが私の耳元で囁いた。


ハルカの息が耳にかかって、くすぐったい。

 
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