ランデヴー II





「ゆかりちゃん、あの……お願いがあるんですけど……」


フロアに戻り自販機の前でお茶が出て来るのを待っていると、紗英ちゃんが遠慮がちに声をかけてきた。


彼女が私の敬語を使う時は、仕事の話の時だ。



「どうしたの?」


紗英ちゃんが仕事のことでお願いなんて、初めてのことだった。


私は少し驚きながらも問い掛ける。



「あの……ゆかりちゃんが受け持ってるA~Eの製品、私に担当させてもらえませんか?」


「……え?」


私は一瞬ぽかんとして紗英ちゃんの顔を見た。


あまりにも突然の話で、咄嗟に反応ができない。


そもそもA~Eなんて私の担当の半分を占めているし、まさか紗英ちゃんが1人で担当できるなんて到底思えなかった。



「あの、全部じゃなくてもいいんです。ほんの1部だけでも……お願いします」


驚く私に縋るように頭を下げる紗英ちゃんに、何だか困惑してしまう。


今まで担当を押し付け合うことはあったが、欲しいと言う人なんて初めてだ。
< 137 / 408 >

この作品をシェア

pagetop