ランデヴー II
「ゆかりちゃん、あの……お願いがあるんですけど……」
フロアに戻り自販機の前でお茶が出て来るのを待っていると、紗英ちゃんが遠慮がちに声をかけてきた。
彼女が私の敬語を使う時は、仕事の話の時だ。
「どうしたの?」
紗英ちゃんが仕事のことでお願いなんて、初めてのことだった。
私は少し驚きながらも問い掛ける。
「あの……ゆかりちゃんが受け持ってるA~Eの製品、私に担当させてもらえませんか?」
「……え?」
私は一瞬ぽかんとして紗英ちゃんの顔を見た。
あまりにも突然の話で、咄嗟に反応ができない。
そもそもA~Eなんて私の担当の半分を占めているし、まさか紗英ちゃんが1人で担当できるなんて到底思えなかった。
「あの、全部じゃなくてもいいんです。ほんの1部だけでも……お願いします」
驚く私に縋るように頭を下げる紗英ちゃんに、何だか困惑してしまう。
今まで担当を押し付け合うことはあったが、欲しいと言う人なんて初めてだ。