ランデヴー II
賢治とのことを話したのだって聞かれたからであって、相手が紗英ちゃんだからという訳ではない。


それがもしも派遣社員の川口さんでも、別の誰かでも、私は否定しなかっただろう。



そんな程度の脆い秘密を重大なものと捉えられていることに、私は戸惑いを隠せなかった。


同僚、友達という垣根を一気に飛び越えて親友と表現する紗英ちゃんに、私は言わなければならないという衝動に駆られる。


親友だと思ってくれている紗英ちゃんに、自分の気持ちを伝えるべきなんだと。



『そう思ってくれることは嬉しいけど、正直私はそこまでの気持ちはないんだ』
と。



そう言わなければ。


オブラートに包まずに、きっぱりと。


この純粋な気持ちで私に向き合ってくれている、紗英ちゃんに。



一瞬の緊張に、頭がぼんやりと霞んだ。


傷付けるかもしれない……心の中がグラグラと迷いに揺れる。


でも……。



大きく息を吸い込み、心を決めて口を開こうとしたその時。
< 180 / 408 >

この作品をシェア

pagetop