ランデヴー II
「坂下さん、大丈夫ですか……?」


呆然と立ち尽くしたままのそんな私に駈け寄って来てくれたのは、派遣社員の川口さんだった。


彼女とは歓送迎会で同じテーブルになったことをきっかけに、社内でも良く話をするようになっていた。



「あ、うん……。何か……良くわかんなくて……」


声をかけてもらったことでホッとして緩みそうになる涙腺を、必死で堪える。


絶対に泣いたりなんかしない……これは私のプライドだ。



叩かれた理由がわからないからこそ、突然の暴力には屈したくなかった。


だが、すれ違いざまにチラリと向けられる他の人達の視線は私を悲しくさせる。



「医務室行きますか? 血が出てますけど……」


「え?」


そう言われて頬に手を当てると、確かに手のひらには血が付いていた。



大したことはなさそうだったが、今この状況で席に行くのはものすごく気が引ける。


まだ早い時間ということもあり、人がまばらなのがせめてもの救いか。
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