ランデヴー II
賢治がどんな顔でこの話を切り出したのか……気になったが、怖くて顔を上げることができない。



大丈夫、倉橋君とは何もない。


彼はただの会社の後輩であり、全ては紗英ちゃんの思い違いだ。


そう、自分に言い聞かせる。



「それも……良くわかんなくて。多分何か勘違いしてるんだと思う」


やっとのことでそう言うと、頭上から小さな溜息が漏れるのがわかった。



「そっか。1回ちゃんと話した方がいいんじゃね?」


「うん……」


私の髪を掻き上げるようにして撫でる賢治にそう頷くも、実際今の状況でそれは難しいと感じていた。



私だって、話ができるのならそうしたい。


だが、取り付く島がないというのはこのことを言うのだろう。



とにかく紗英ちゃんは、ことごとく私のことを避けた。


少し話がしたいと言うと「今忙しいから」と言って断られ、顔も見てくれない。


仕事の話すらまともに聞いてくれる気配がなく、困っていた。
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