ランデヴー II
「話、したいんだけど。倉橋君のこと含めて」


私は彼女が話を聞いてくれるように、わざと倉橋君の名前を出した。


そうすれば話し合いに応じてくれると思ったし、あながち嘘でもない。



案の定彼女は眉を寄せて不満そうな顔を見せながらも、再び腰を落ち着けた。


だがその表情は、酷く不安げだ。


今まで怒っていると思っていたのに、もしかしたらそういう訳ではなかったのだろうか。



「紗英ちゃん。守山さんに……変なこと言ったよね?」


「…………」


彼女は視線を落として手元にあるチョコレートの箱を長い爪で弄ったまま、返事をしない。


その綺麗に手入れされたネイルには、ラインストーンがキラキラと光っている。



「何か、勘違いしてることがあると思う。私と倉橋君の間には何もないし、陰で会ったりもしてない。仕事で関わってるだけだよ?」


彼女はしばらく無言で俯いていたが、じっと見つめる私に根負けしたのか、おもむろに顔を上げた。


その視線は定まらず、何だかバツが悪そうにゆらゆらと揺らいでいる。
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