ランデヴー II
結局何も言えないままに、私達は地下鉄の階段を降りていく。


別れ際、「あの……」と倉橋君が何かを言おうとした。


首を傾げて見上げるが、結局言い淀んだままの彼がその続きを話すことはなかった。



私は1人電車に揺られながら考える。


あんなにも悲しみに暮れた彼に今私がしてあげられることは、何だろう、と。


過去に落ち込んでいた私が倉橋君にしてもらったように、私も彼に何かしてあげたい気持ちでいっぱいだった。



だが……色んなしがらみが私の気持ちにブレーキをかける。


倉橋君を気にかけながらも、1歩踏み込んで彼の心に寄り添うことができない。


こうして普通の生活を続けるしかない自分が、もどかしかった。



すぐ近くに彼を元気付けてくれる人は、いるのだろうか?


抱き締めて安心させてあげられる人は、いるの?



そんなことが酷く気になる夜だった。
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