ランデヴー II
この前の出来事がなければ、恐らく彼の存在はスルーして声もかけずにフロアに戻ったことだろう。


だが倉橋君のことが心配な今、私にその選択肢はなかった。


あの日の動揺した彼の姿を思い出すだけで、今も胸が苦しくなる。



「休憩?」


「えぇ、まぁ……」


当たり障りのないつまらない言葉に、倉橋君も曖昧に頷いた。


全く精彩を欠いたその表情は、お祖母ちゃんが倒れたことが相当堪えているのだろうということが窺える。



「あの……大丈夫?」


ちゃんと食べているのだろうか。


ちゃんとした生活を送っているのだろうか。


それだけが気になり遠慮がちに尋ねると、彼は私に視線を移して首を傾げる。



「その……顔色、悪いから」


「あぁ、大丈夫ですよ。心配しないで下さい」


そう答える倉橋君は、全く大丈夫そうには見えない。


強がる姿が更に痛々しく感じた。
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