ランデヴー II
「あの……仕事、頑張って」


結局私は一瞬だけ考えた後に、それだけしか言えなかった。


そんな私に、倉橋君も何故かホッとしたような顔をする。



「はい、坂下さんも」


小さく笑って去って行く後ろ姿は、やっぱり落ち込んだ様子に見えた。



『何か困ったことがあったら、いつでも相談に乗るから』


本当は、そう言いたかった。


思い悩んだような倉橋君の顔が、頭にこびりついて離れない。


このまま彼を放っておいていいのだろうか……そんな疑問が頭を掠める。



私はお茶を口に運びながら、そもそも倉橋君が何故ここに座っていたのかを考えた。


今まで倉橋君がここで休憩している所を見たことがない訳ではない。


だがこの窓際の席に座っているのを見たのは、今日が初めてだ。



もしかして……私を待っていた……?


そんな自惚れた思いが心に浮かんだ。


……小さく息を吐いて、「まさかね」と1人呟き首を振る。
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