ランデヴー II
ふぅ……と。
お店の前に着いた私は、息を整える。
たいした距離ではないが、色んな気持ちが絡み合って何だか心が落ち着かずに息が上がる。
意を決して扉を開けようとすると、そこから数人のサラリーマンらしき人達が大声で笑いながら出てきた。
すっと彼らに道を譲ってやり過ごしてから、私は開けっ放しの扉から中に足を踏み入れる。
そこは会社のすぐ裏側にある、おでんで有名なこじんまりとしたお店だ。
店内にはまだ数組のお客さんが残っていて、見回すとカウンター席には本当に1人で座る倉橋君の姿があった。
だがもはやいつものクールで堂々とした姿は見る影もなく、テーブルに項垂れるように寄りかかりながらブツブツと何かを呟いている。
「倉橋君」
そう呼んで隣に座ると、彼はとろんとした目で私を見た。
その顔は真っ赤で、紛れもなく酔っ払いそのものだ。