ランデヴー II
「あー、坂下、さん。こんばんわ」


「こんばんわ、じゃないでしょ? こんなになるまで飲むなんて……。すみません、お水下さい」


お店の人にそう言うと、私はとりあえずコートを脱いでメニューを手に取った。


せっかく来たんだから、おでんでも食べて帰ろうと思ったのだ。


まだまだ夜は冷えるし、温かいおでんは空腹の私にとってとても魅力的だ。



「ビール1つと……あと、Aセットをお願いします」


カウンター越しに水を受け取り、そう注文をした。



Aセットとは、大根、卵、じゃがいも、はんぺん、こんにゃくがセットになった、このお店の定番メニューだ。


選ぶのが面倒な時は、大抵最初にこれを頼めば間違いない。


ここには私も何度か足を運んだことがあった。



「倉橋君、水」


そう言って目の前にコップを差し出すも、彼が手を着けることはない。


それどころかプイッと向こうを向いて、カウンターに突っ伏してしまう。



私は小さく溜息を吐くと、とりあえず目の前に出されたビールに口を付けた。


胃へと流れ込むアルコールが心地良く、さすがに疲れているなぁと感じながら長く息を吐き出した。
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