ランデヴー II
本当は、今すぐにでも倉橋君のことを聞きたかった。


どうして家に帰りたくないのか……一体、何があったのか。


お祖母ちゃんのことに関係しているのだろうと予想はつくが、ゆっくりとした沈黙が流れ、気持ちだけが焦ってくる。



いつ「帰る」と言って、倉橋君はここから立ち上がるのだろう。


そればかりが気になるものの、聞かなければならないはずの言葉はちっとも出てこない。



それは、遠慮だった。


私にそこまで立ち入った話を聞く権利があるのだろうか。


ただの職場の同僚で部署も違う私に話せるようなことなのだろうか……そう考えると、何も聞けなくなる。



でも――。


彼は、口を開いた。


くだらないことを考え過ぎている私の心を知ってか知らずか、「実は……」とポツリ、話し出した。



目を閉じたままの彼は、苦しそうに眉根を寄せている。


私の胸が、トクンと小さく音を立てた。
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