ランデヴー II
声を詰まらせて顔を伏せる倉橋君の肩は微かに震えていて、私は膝の上で自らの両の手をギュッと握り締める。


倉橋君の心中を思うと、まるでガリガリと胸が掻きむしられるように、痛い。



「今、祖母は点滴で生きています。俺は……胃に手術をしてでも、食事を摂って長生きをして欲しい。それをしないと、祖母はもう持たない。でも……父も母も親戚達も、それを拒否しようとしているんです」


「そう……」


「そんなの、殺人と一緒です。生きている人を見殺しにしようとしているのと、同じです……!」


倉橋君の手からペットボトルが滑り落ち、トンッ、と床に落ちて音が鳴った。



自由になった腕全体で顔を覆って体を折る倉橋君は、声を押し殺して泣いていた。


その姿に、私は唇をキュッと噛み締める。



以前、テレビで見たことがある。


外国では、日本のように寝たきりの老人はいないと言う。


それは人としての尊厳を守り、延命をしないからだ。



延命をするということは、逆に人に人としての生活をさせないことに当たると。


決して良い事ではないと、思われているからだ。
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