ランデヴー II
「祖母ちゃんは、何を望んでるんだろう……」


倉橋君のその小さな呟きは、私の心に深く突き刺さった。



お祖母ちゃんにしかわからないその心は、私達にとっては想像することしかできない。


人は老いることによって、生死すら自らで決めることができなくなるのだと。


そう思うと悲しくて、また涙が出た。



「え……何で坂下さんが泣いてるんですか?」


気付くと倉橋君が私の方を見ていて、少し慌てたように濡れた頬に手を伸ばし、優しく指を滑らせた。


不意打ちのようなその動作にドキッと胸を弾ませながら、でも抵抗することはせずにギュッと目を閉じる。


しがみつくようにして倉橋君の体に手を回したまま、私はただ俯いていた。



するとその一瞬の後――私は倉橋君の腕の中にいた。


ふわりと体が包まれる感覚は、私の胸に既知感を呼び起こす。


息を呑み体を強ばらせると、「今だけ……」と言う倉橋君の声が耳元に聞こえた。



「少しの間だけ、こうさせて下さい。お願いだから……」


そう懇願され、私は迷いながらも少しずつ体の力を抜き、倉橋君の胸にもたれて身を任せていく。
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