ランデヴー II
倉橋君の胸から鳴るトクトクと早い鼓動を聞きながら、彼もドキドキしていることに驚いた。


でも私の胸の方が、きっと早く脈打っているに違いない。


だって今にも壊れそうな程に、ドキドキと暴れ回っているのだから。



「何か……久しぶりにこんなに穏やかな気持ちになれた気がします。やっぱり、坂下さんの隣はいいな」


耳元の空気を揺らしながら、倉橋君が溜息を吐くように言葉を紡いだ。


目を上げて少し身じろぎするも、倉橋君の腕が緩むことはない。



「昨日……電話くれて嬉しかったです。酔ってたけど、ちゃんと覚えていますよ。俺のこと心配してくれたんだなぁって……」


ポツポツとゆっくり話しながら、私の髪の毛にするすると指を通す。


その感触が、やけに心地良く感じた。



「俺……祖母ちゃんのことがあって、思うことがあって。やっぱり……後悔したくないなって。今できることはちゃんとしたい。そう思うんです」


倉橋君の言葉が、後悔だらけの私の胸をチクチクと刺す。



でも私も、後悔したくてしている訳ではない。


せめて倉橋君には私みたいに後悔だらけになって欲しくない……そう思い、私は「うん」と首を小さく動かした。
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