ランデヴー II
そのことに気付いた時、ドクンと心臓が脈打ち体が震える思いだった。


私はなんて……なんて最低なことをしているんだろう。



賢治のことを忘れた訳ではなかった。


だから、倉橋君からの言葉に答えることができなかった。



でも……倉橋君とキスをした時――。


私の頭の中には、完全に賢治の姿はなかった。


それどころか、私は心から倉橋君のことを求めていたのだ。



「可哀相だから……?」


自責の念に駆られ愕然とする私に、倉橋君はボソッと口を開く。



「……え?」


「俺が可哀相だからって、流されちゃ駄目ですよ」


「え、そんな――」


「じゃぁ、また会社で」


倉橋君はまるで私を拒むかのようにして背を向け、今度こそこの家を出て行った。
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