ランデヴー II
確かに……私は陽介に、自分の醜い気持ちをぶつけることはできなかった。


結局最後は、諦めてしまったのだ。


陽介のことを責めたり、怒ったり……心の中では理不尽な気持ちばかりが溢れていたのに、それをぶつけることもせずに。


物わかりのいい女を演じて、陽介の幸せを願うふりをした。



賢治にも……そうなのかもしれない。


もっともっと向き合って話せば、あんなわだかまりすぐに消えたかもしれないのに。


私はぶつかることを恐れ、もう賢治の前で倉橋君との件に触れることをしなかった。


そのくせ心の中では悶々とした気持ちを、未だに抱えているのだ。



『1度でいいから、自分の幸せだけを考えて動いてみなよ。傷付けるとかそんなことをうじうじ考え過ぎるの一切やめてさ。そんなの実際傷付けた後で悩めばいいだけの話でしょう?』


佐和子が放ったその言葉は投石のように一直線に飛んで来て、私の心にじわじわと波紋となって広がっていく。



自分の幸せだけを考える……もちろん私だっていつもそれを求めて生きてきたはずだ。


だから賢治と付き合うことにしたし、結婚だって考えた。
< 315 / 408 >

この作品をシェア

pagetop