ランデヴー II
今日賢治が出張で、本当に良かったと思う。
いつも通りに振る舞える自信が、どこを探しても見つからなかったからだ。
そしてそう安堵している自分が、果てしなく嫌だ……と。
そんな取り留めのないことを考えながら、長い長い仕事を終えた。
倉橋君とは電話で1度仕事の話をしただけで、お互い変わり映えのない日常だ。
ただ私の心は正直で、鼓動だけは反応を示す。
今朝のことを思い出すだけで、胸がチリチリと熱く焦げ付くようだった。
そしてこれからの私はもっと嫌な人間になるだろう。
会社を出て賢治の家へと向かいながら、そう感じていた。
行き交う車のライト。
街の人々の喧噪。
いつもは何も感じないそんな風景が、ただの1枚の薄っぺらい絵画のように見える。
私だけがそこから切り離され、魂だけは別の場所にあるような……そんな感覚。