ランデヴー II
「何か担当者変わったから親睦会っつって引き止められて、なかなか帰れなかったんだよ」


「そっか……」


ゆるゆると耳元を辿る賢治の指がくすぐったい。


どうすればいいのかわからずに、私はそのままじっとその場に座っていた。



「で、話って?」


不意に体を起こした賢治に顔を覗き込まれ、思わずコクンと喉を鳴らしてしまう。


言いたい言葉は、ただ1つ。


でも言わなきゃ……言わなきゃ、と思う程に言葉はどんどん頭の中で遠くへと霞んでいくような気がした。



固まってしまった私を見て、賢治が怪訝な顔をする。


そして宥めるように私の頭をポンポンと撫でると、ゆっくりと顔を近付けてきた。


一瞬の風とアルコールの香り。



「賢治……!」


唇が触れる直前で、私は咄嗟に顔を逸らした。


「しまった」と思っても後の祭りで、恐る恐る顔を向けると賢治が眉根を寄せて私の顔を見つめている。
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