ランデヴー II
「ごめん……ごめんなさい。ずっと違うって、言い聞かせてた。でも……もう、自分に……賢治にも、嘘は吐けない……」


賢治の激情に突き動かされるようにして絞り出した私の声は、震えていた。


ドクドクと逸る胸の音は頭にも響いてくるようで、クラクラする。



いっそこの場から逃げ出すことができたなら、どんなにかいいだろう。


そんなことは私の罪と同様に許されるはずもないのに、涙で霞む視界に賢治を捉えながら、もうどうすればいいのかわからなくなっていた。



「くっそ……」


賢治は吐き出すようにそう言うと、私の腕からずるりと力を抜いていく。


そして手で顔を覆うようにして項垂れ、「帰れよ……」と小く呟いた。



「帰ってくれ」


再びハッキリとそう言った賢治の声が最後だった。


もはや私に顔を見せることなくその場から動かない賢治の前から、私は消えることしかできなかった。



もう……許して欲しいなんて言えない。


2度と笑い合うことができなくなったと思うと寂しくて寂しくてたまらず、帰り道は涙が止まらなかった。
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