ランデヴー II
片手でキーボードを叩きながら受話器を取ると、そこから聞こえた声に思わず息を呑む。



「販売戦略部の倉橋です。坂下さんですか?」


電話の向こうから聞こえる落ち着いた声に若干動揺しながらも、私は「うん、どうしたの?」と尋ねた。


恐らく倉橋君はこの時間まで私が残っていることを信じて疑っていなかっただろうし、私もこの電話がきっと仕事の件だとわかっている。


それでもどうしようもなく思い出されるのは、2人で過ごした数日前のことで、思わず頬が熱を持った気がした。



「あの、榊原さんってまだいますか?」


「榊原さん? 今日休んでるけど」


「えっ……!?」


電話の向こうで言葉を失っている倉橋君に、私は首を傾げた。


何かあったのだろうか。



「実は……榊原さんから1件請求書が回ってきてないんです。忘れてた俺も悪いんですけど、さっき経理の人からの電話で気付いて……。坂下さん、何か知りませんか?」


「えっと……内容は?」


「今月発注システムに少し手を加えてもらったんです。うちの予算で通ってたものなので、こっちの費用になると思うんですけど……」
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