ランデヴー II
「坂下さん、あの――」


「ごめん、邪魔して……。書類、デスクに置いといたから」


倉橋君の口からどんな言葉が出るのか、聞くのが怖かった。


だから私は慌ててそれだけ言うと2人の隣をすり抜けて、一気に階段を駆け下りた。



心の中はぐちゃぐちゃで、悲しい気持ちが止まらない。



どうして?


何故私を好きだと言ったの?


あれは……あのキスは、何だったの?


ただの気まぐれ?


からかってた?



ぐるぐると頭の中で答えのない自問を繰り返す。


今にも泣き出しそうな気持ちを必死で抑えながら、私は経理部の小原さんに書類を渡して自分の部署へと戻った。



力なくとすんと席に座ると、さっきまでは感じなかった疲労感にずっしりと体が沈みそうになっていく。


頭に何度も浮かぶのは、2人が抱き合う姿だ。
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