ランデヴー II
「坂下さん!」


一生懸命に気持ちを取り繕おうとする私を追いかけて来るのは、そんな努力を打ち砕くような彼の声。


私は更に歩くスピードを上げながら、もはや片手では足りずに両手でぐちゃぐちゃの顔を拭った。



もう、追いかけて来ないで欲しい。


今は話をできる状態じゃないし、涙だって止まらない。


1人で静かに気持ちの整理をしたいのに。



でもそんな私の思いも虚しく、すぐに私の腕は倉橋君の強い手に絡め取られてしまった。



「待って下さい! 話を聞いて下さい!」


ぐいぐいと私の腕を引くその手は、強く突き放そうとしても振り解くことができず、私は歩みを止める他ない。


それどころか正面に立とうとする倉橋君から、私は必死で顔を逸らした。



「離して。もう疲れたから帰りたいの」


やっとの思いでそう言った私は目の前に立ちはだかる倉橋君を押しのけ、その手を引き離そうとした。


だが倉橋君は私の腕から手を離すことはなく、今度は逆に私を引き摺るようにしてずんずんと歩き始める。
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