猫かぶりは血を被り、冷徹はささやかに一瞥した


「まったく……」


無茶苦茶だと瓦礫の成り損ないになった車両に目をやる。見れば、車内に取り残した書類の束が挟まっていた。水の被害をもろにくらってはインクは滲み、文字が黒点になっている。


もう読めやしないかと、ルカは水に濡れた外套を脱ぎ捨てた。


「聞こう。なぜ、この場所に来た」


釈明の余地ありとルカが聞けば、あっけらかんとエレナは答えた。


「見晴らしがいい場所に出たかったからですよー」


悪いことしたとは思ってなく、弁解ではない答え。そこで目くじら立てるほどルカは短気でもないが、依然として理解不能な箇所がある。


「確かにこんな開けた場所ならば、あいつらが隠れる影もないが」


見るからに暗殺者な奴らへは妥当な戦略だった。


< 55 / 81 >

この作品をシェア

pagetop