猫かぶりは血を被り、冷徹はささやかに一瞥した


騎手に挑むとは無謀にも見えたが、エレナは果敢なだけだった。


もはや、ここからはエレナの独断場。馬に跨がる輩がこの場に来たこと自体が敗因。


石がごろごろ転がる浅瀬は馬の四本足には不向き。石で踏み崩れた蹄に馬が動くことを四苦八苦と訴える間もなく、斬られた。


黒々しい獣の血。
寸断されたのは足。

水しぶきと共に不純物が混ざって飛び散った。


エレナの一撃はその大剣に相応しく多大なる攻撃だ。


鍛えられた馬の足を骨もろとも真っ二つにするのだから余程の切れ味にして、その大剣の重量を紙切れと感じさせる振りかざしはかまいたちめいていた。


「ぐっ……」


足が三本になった馬から落ちる騎手。斜めに落下する体だが、着地点には稲光する刃があった。


< 58 / 81 >

この作品をシェア

pagetop