猫かぶりは血を被り、冷徹はささやかに一瞥した


「な――」


悲鳴間もなく、重力に逆らえない人間は身を丸めることなく逆さの断頭台へと落ちる。エレナが用意した大剣の上に。


馬の血と人の血が混じり合い、水のせせらぎを汚していった。


「殺さないでーって命乞いはしないでね。そっちはこっちを殺そうとしたんだから」


変わらない朗らかな顔なのに、足元で絶命した者を作り上げた張本人となれば歯ががたつく。


「っ、降りろ!囲え!」


リーダー格らしき人物が二の舞を予期して行動の指令を出した。


残りは三人。降りるというよりは鞍(くら)からのジャンプ。曲芸師らしい体の軽さを生かして、エレナの周りを囲った。


図で表すなら、エレナを中心に三角形の頂点を陣取るものか。仲間同士の相討ちを免れるためにも、一人一人時間差で来るのは予測できた。


< 59 / 81 >

この作品をシェア

pagetop