猫かぶりは血を被り、冷徹はささやかに一瞥した
「でも、国の重鎮ならともかく、エレナなんかを殺したところで戦争なんか起こるんですかー」
「『私が殺した』という理由だけで、そこから話を誇張させればいい。重鎮だろうが何だろうが、殺された事実さえあれば、立派な大義名分。仮にできなかったとしても、お前が守護するのは王様候補の中でも有力株なのだろう。
話からして、人望厚いとなれば人格者と見える。現国王が玉座から立ち上がった後でも優遇されるように次代王へと手引きする手を差し出しても、きっぱりと断ると判断されたか。
お前がこうして私の護衛についたのも、殺す価値があるとレッテルを貼られたようだ。有力株を少しでも勝利から遠ざけ、自分の唾がかかった者を王にしたいとも見える」
「くわー、ムカつきますー」
足で水を蹴りあげたエレナ。そんな私利私欲のために命を狙われ、戦争の引き金にされるとあってはがなりたくもなるだろう。