猫かぶりは血を被り、冷徹はささやかに一瞥した
落ちた首を拾うルカ。僅かながらに楽しそうに見えたのは。
「釘を刺すことはできる。そちらの思惑は分かっていると示唆しながら、あえて訴えない。何もしないことが“何かをする”と危機を感じさせ、滅多なことはもうしないだろう。
“表向きは”、親交深める同盟国だからな。あちらが申し出した以上、その体裁を王が破棄して民の信頼を失うわけにもいかない。
せいぜい、王の役目をまっとうすればいい。どうせそいつはすぐに落ちる」
この首を見せた時の王の顔でも過ったか、表向きを壊せない王が破願を必死に取り繕うさまに鬼畜ルカは笑う。
人の不幸よりは人の苦痛がルカにとって蜜の味らしい。策士が手のひらに乗る道化を転がしているようだ。エレナにしてみれば、その冷徹な笑みに鳥肌が出るほど怖さを感じた。