さくら色 〜好きです、先輩〜
「み、んな…ありがとな…っ、だけど兄ちゃん、もう大丈夫だから」
先輩は腕で涙を拭うと、子供達一人一人の顔を見つめた。
「ホント?」
「ああホントだ。皆のお陰だよ。ありがとう」
その言葉に安堵の表情を浮かべる子供達。
「何かあったら言ってね。俺ら兄ちゃんの味方だからな!」
「頼もしい味方だな。よし!じゃあ練習するか!皆、先に行ってチーム別けしてて」
先輩の顔には再び笑顔が戻っていた。
子供達の力ってホントに凄い。
皆の純粋な想いが先輩の心に届いたんだ。
「西原さん」
「はい?」
「ありがとな」
そう言って先輩は子供達の所に走って行った。
その後ろ姿には迷いなんてなくて、寧ろ堂々としているように見えた。
さっき飛んでいた鳥はもう何処かへ行ってしまった。
代わりに真っ青で広大なキャンパスに、飛行機がスゥッと白い線を描いていた。
まだまだ長い道のりを。
ただ真っ直ぐ、前だけを見て。