さくら色 〜好きです、先輩〜
『男女混合サッカーの決勝戦を行います。3年4組と1年2組の選手は校庭に集まって下さい』
大会進行のアナウンスが聞こえ、生徒がぞろぞろと校庭に向かい始めた。
「じゃあ私、先に行きますね」
「おう。悪いけど本気でいくからな」
「はい!私も負けません」
私は先輩に会釈をして校庭に向かって全速力で走った。
校庭にはたくさんの生徒が集まり、応援歌や大太鼓の音で賑わっていた。
毎年男女混合サッカーの決勝戦は、球技大会の最大の盛り上がりを見せるというだけあって驚くほど応援に熱がこもっている。
校庭を囲う応援の生徒の間をすり抜け、ウォーミングアップを始めているクラスの皆の元へ急いだ。
「葵ー!おかえり」
那奈は私の姿を見つけると大きく手を振って叫ぶように言った。
「遅くなってごめんね」
「先輩と話せた?」
「うん。ちゃんと話せた!足は大丈夫みたい」
「そっか!良かったね!…ねえ、何かいいことでもあったでしょ?」
那奈はニヤニヤしながら肘で私の脇腹あたりを突ついてくる。